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小坂・本殿上
筒井筒小坂
つついづつおさか
山形村では、後世の研究家たちによって、
全ての道祖神に名前が付けられていますが、
一番最初に名付けられたのが、この「筒井筒小坂」です。
「筒井筒」とは、伊勢物語の中の話の一つで、
幼なじみが、恋を実らせ夫婦になるという物語のこと。
この道祖神は男神女神ともに額が広く、
あどけないお顔をしています。
女神に手を握られた男神は
嬉しさを隠しきれずに、少し俯き加減になり、
女神もまた、恥ずかしそうにお顔を下に向け、
いかにも初々しいお二人です。
ともに、大変立派な公家の正装を身につけています。
女神は冠をつけ、結った髪を背後に垂らす「おすべらかし」。
平安朝の雅やかな宮廷生活を思わせます。
山形村には「筒井筒」と名のつく道祖神が4体ありますが、
石の選び方や彫刻の技法、作られた年代が共通することから
4体ともに、同じ高遠の職人が作ったものであろうと言われています。
しかしこの像は、着物の細部を省略し
抽象的に表現しているところが、他の3体と大きく異なっています。
また、お二人をぐるりと囲む彫り込みを「中区(なかく)」と呼びますが、
ふた山の中区が彫られている道祖神は、
山形村ではこの「筒井筒小坂」のみです。
「筒井筒」と名前につく道祖神は、
「上大池」「中大池」「下大池」の地区にもありますので
ぜひ、そちらもご覧になってみてください。